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スイス救急病棟

 

一昨日の続き。

 

屈強な隊員たちは、拙を救急車に乗せるとどこに行こうかと病院を探しはじめた。割とすぐ近くに一度止めたので、自宅から近くて良かった。夜中に治療が終えて、帰宅するのならタクシーでも安いだろうなどと考える。

 

道々、痛みの意識の中で明日は国連のバザーがあることを思い出した。前日、その準備で知り合った人々(日本人、タイ人、中国人などなど)に再開するのを楽しみにしていた矢先のことだった。準備を一緒にしていたG君には罪悪感さえ覚える。

 

安いクリスマスカードも買いたかった。あ、でも、これで今年は紙を無駄にせずに済むかな?皆さん、メイルでご挨拶していい?って、最近、友人たちはこのブログを観に来ていないけど。

 

ともあれ、来年は絶対に国連バザーに参加しようと思う。来年も同じ頃に、同じ病気になったら面白いな。いや、面白くない。痛いだけだ。それまでに治療を終わらせたい。

 

病院に着くなり、隊員たちは受け渡し手続き済ませ、拙の元に寄って来て、握手、握手。いやいや、本当にありがとう。助かったよ。

 

ロビーには10台あまりの担架が並んでいる。

 

「えー、10番目かよ」

 

フランス語よく判らんし、病院から帰る方法もよく判らんし、ということで同伴してくれた妻には椅子があてがわれて、大あくび。これも罪悪感。

 

気分が落ち着くまで、話していると、どこからともなく囁くようなS’il vous plaitの連呼。他の言葉ははっきり聞こえない。か細い哀れな声だ。

 

うとうとすると、その声が聞こえて目が覚める。目が覚めると痛みも思い出す。目を覚ますたびに「これが夢なら…」と思う。

 

その囁きの出所は拙の足元、隣のベッドにいる婆さんであることが判ると、不気味に思えた。妻もしばらくの間、どこからその声がしてくるのかが判らなかった。なんだ。腹話術か。

 

婆さんの声はしだいに大きくなり、泣き出すようになった。いつも同じパターンで、

 

「マダーム、ムッシュー、寒いわ。足のために毛布か何かを持って来て頂戴。シル・ヴ・プレ」

 

「マダーム、ムッシュー、私はいつまでここにいなければならないの~、教えて頂戴。シル・ヴ・プレ」

 

「なぜ誰も応えてくれないの~。オーン、オンオン」と声高くなる。泣き声もワンパターンで明らかなウソ泣き。狡猾なバーちゃんだ。

 

そして、こういう時間が延々と続く。病院のスタッフは時々話しかけては、この婆さんの世話をするが、かなりボケている様子。年齢は90歳くらいか。

 

「私はドイツ語圏なの」

 

と言うものだから、ある医師がドイツ語で話しかけると、彼女の反応が止まった。

 

「このお婆さんがいなかったら私たちも眠れるのにねえ」と妻。

 

待合ロビーで待つこと既に2時間。眠れず、痛みは消えず、目はぼやけて何もできない。

 

「この婆さんにモルヒネ打ってもらおうか?シル・ヴ・プレって」

 

それからさらに2時間後、この婆さんは治療室に運ばれて行った。拙は激痛はあるものの致命的な症状ではないし、モルヒネ注射を打たれているので、順番はどんどん後回し。

 

午前5時ごろに気づくと、アル中で搬入され点滴を受けている若いやつらと拙しかいなかった。

 

「順番はいつになるんだ。こいつらと同じ扱いってのはひどくないかい」と文句を言うと、英語の話せる看護士は、

 

「まだ痛むの?」ときやがった。

 

「痛いからここにいるんじゃないか。検査があるからって、連れて来られたんだ。担当医を決められなくたって、必要な検査はパラメディックのレポートからも明らかだろう。さっさと検体をとりやがれ」

 

と英語で毒づく。

 

「でも、検体を取ったって、結果が判るのは朝の9時以降よ」

 

「じゃ、何のためにここにいるの?何のためにここに連れて来たの?時間と体力の無駄遣いと、あのばーさんに精神衛生状態を悪化させられただけじゃん」

 

拙の主張には反論せず、看護士たちはすぐに拙を治療室に連れて行き、医師に会わせ、問診と触診、そして検体を取る。

 

事情を汲んだ医師はその部屋で妻と拙が寝ることを許可。時々世話を焼きに来る看護士は英語ができない。「起こすなよ、このぉ」

 

そんなこんなで、検査のあとの診断を経て、病院を出たのは11時ごろ。病気になって夜中中病院に居て、眠れぬまま過ごし、夫婦ともにとても不健康になって帰宅したのが12時半ごろ。

 

若い頃は一晩中飲み明かしたけど、40代後半でモルヒネで夜明かしはきつい。やっぱ、あの婆さんは体力あるんだなあ、と変なことに関心した。

 

時差ぼけのような感じは2日間続いた。病院に行けば、病気は治して貰える筈だけど、なんだかもっと病気になりそうな体験だった。まあ、救急病棟に行くことなんて滅多にないだろうけど、行くことがあれば、読み物を忘れずに。

 

それから、後日談で入った情報

 

拙は市民病院に搬送されたが、私営で対応が早い病院もあるとのこと。待ち時間もせいぜい23時間。普通はそっちにいくらしい。

 

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無題
国連のバザー、面白そうですね。
日本のように、模擬店で各国のおいしいものを食べ歩きなんてできるんでしょうか?
TLJG 2007/11/23(Fri)21:24:34 編集
TLJGさま
物品、食品、そして料理の3つブースを出している国が居たそうです。日本は巻き寿司やイナリを出すと聞いていたし、韓国のブースはかなり気合が入っているようだったので、期待していました。でも、キムチも拙の身体に良くないですよね。
【2007/11/23 21:44】
無題
えーーーーーっ!ネットの調子が悪くつなげなかった間にそんなことになってたなんて。大丈夫ですか?
Seto 2007/11/24(Sat)11:24:13 編集
setoさま
とりあえずモルヒネを貰ってあるので痛みの対処はなんとか。根本治療は来週ですので、またアップできると思います。医師は英語話せるという話ですが・・・。
【2007/11/24 16:43】
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