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今冬は2度スキー場に行った。

でも、2度とも仕事で行ったので、スキーはしていないが、

2度とも滑って転ぶ人を見た。

30年前の夜中、横浜に住んでいたころ、

泥の雪道の中に右足を突っ込んで

スライディングをするような格好でにコケた。

昼間は受験勉強していたので、外が雪だったことに気づかず、

小腹が減った午前1時ごろに近くのミスタードーナツにココアとドーナツを買いに行く途中であった。

お尻までびっちゃりと泥にまみれたみぞれの中に埋もり、

股間は痛いわ、足首はひねるわ。

立ち上がろうとすると、右足首に力が入らない。

さては骨折?

場所は拙宅から50m、消防署まで200m

自宅治療か、救急医療

さて、どちらへ向かうべきか?

これは骨折であっても、急患というほどのものではないだろうし、

もし、骨折でなければ大恥ではないか?

明日の朝、部屋に居ないわが子が、知らぬ間に病院に担ぎ込まれていたとしたら、母と兄はどんなに驚くだろうか。どちらにしても家人を起こしたくない。

おまけに、舗装道路とは言え、黒い雪が路肩と歩道との間に積もっているし、

これは帰宅した方が良いだろうと雪道を這って家路につく。

家人はもう寝ているので、静かに風呂場に向かい、

びしょ濡れで震えながら服を脱ぐ。

右足首は捻挫とは思えない腫れ方。

凍えながら全裸になり、冷水のバケツに右足を突っ込み、

暖かいシャワーを浴びる。

冷たくて、寒くて、暖かくて、痛い。

骨折だとしても、骨が外れているようでもないので、明け方まで家人が起きるのを待つ。

夜中中痛くて眠れなかったので、勉強をした。

あさってはKO大学の入試だが、滑り止めなので受けなくても良いと思いつつ、他校の受験にも備える。

「あれ、滑り止め?でも、今滑って転んだ。いやな予感」

などと、卑近な迷信は気にしない性質だが、この一瞬の弱気に邪気が押し寄せたのだろうか。

この年、松葉杖をついて受けに行った大学にはすべて落ちてしまった。

この結果に驚いたのは拙だけではなく、拙の成績を知る人々すべてだった。

その失敗を雪のせいにするつもりはない。

でも、雪が怖い。

拙を殺すならスキー場に連れていけばいい。

ジュネーブではしょっちゅうスキーに誘われる。




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