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街はきれいで、犯罪も少なく、ヒトは親切で、誰もが英語を話して、食材や物資の豊富な街ならアナタはきっと気に入るだろうと妻が言ったのはいつのことだっただろうか。
生活を始めて1週間が経ち、ひと月を迎え、やがて3ヶ月目に入ろうとしている今、拙には妻の言った言葉でこの生活を埋めようとしても、埋まり切らず、事実に基づく印象はどんどん地底に落ちるばかりで、生活の中に大きな穴がぽっかりと開いたままになっている。しかも、生活のインフラが整わないまま、拙の生活は半ば立ち往生している。すべてが中途半端で、快適とはほど遠く、諸手続きにはかなりの時間を要する。
そういえば、先日の天皇誕生日パーテーでは名刺に困った。拙は自由業だから立場が変われば、タイトルも変えなければならないので、名刺の肩書きを変えてはPCで作って印刷をする。しかし、そのプリンターがイマイチ使い難いのは、期待していたPC備品やサービスがこのジュネーブには見当たらないためだ。やむなく、拙は急造名刺をA4普通紙に印刷して、「まだインフラが整わないんですぅ~」などといちいち言い訳をしながら人々に渡した。それならまだいいのだが、妻の場合は事務所と国のロゴ付きの壮大な名刺がいまだに出来ていない。当然、その種のパーティはもちろん、会合、レセプションで不便で恥ずかしい思いをする。でも、スイス人には恥ずかしいことではないようだ。恥ずかしく感じるのは、日本人並みに体裁を気にする英国人の妻だ。
スタッフによると、印刷屋のせいになっているのだが、それはオカシイ。そんなに時間が掛かることなら、前もってやっておくことも可能だった筈。そう言うと、スイス人担当者はいい訳をしてフェイド・アウトしてしまう。その言い訳に突っ込みを入れるのはスイスでは野暮に当たるのだろうか。この無骨なネイチャーの彼らに面と向かって物申したくらいで、その後は凄惨な人間関係の中で生きていかなければならなくなる。…とは考え難い。やはり洒落の通じなさは世界でもトップレベルなのではないだろうか。
ところで、これは洒落か、と思うような扱いを受けた。
先日、しばらくの間、拙の自家用車にはスピードメータがなかったばかりか、タコメータなど計器関係は何ひとつ付いておらず、ダッシュボードカバーも外されていた。
拙車は仕様変更の最終段階に入っていたのだった。その業者は言った。
「マイレージ表示からキロ表示に変える作業に2,3日手間取るので、ダッシュボードから計器を外したら、そのまま持ち帰っていいよ。3,4日後にまた取り付けに来てくれたら、小1時間ほどで付けるから」
「も、持ち帰るって????。計器なしで片道10キロ運転しろっての?」
「そうだよ。簡単だろ」
幸い、仲介してくれている職員が当方の意向(計器なしでは運転できないから代車を出せ)と、業者の意向(計器なくても走れるだろ)との間で調整し彼の奥さんの車を借りることになった。もちろん、その仲介者とその奥さんとの厚意と配慮であって、業者は関わっていない。
この話を仲介者から聞いて、しばし唖然。走行距離、ドライヴィング・ステイタス、エンジンの温度計、スピードメーター、燃料メータ、タコメータなど数々の安全を確認する計器なしでの運転など誰が許すのだろう。警察に止められたらどうする?事故になっても保険が下りるのか?責任は運転者に帰する筈だ。ちょと考えただけでも業者の判断が狂っているとしか思えない。しかし、業者はこのことに何も触れず、代車を出すとは言わなかった。理由は「運転できるから」だそうだ。
ああ、この国の常識ちょと怖い。
車は今のところ正常です。