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昨日に引き続いて、山の話。
これも先週の話ですが、家族でモンブランのあるシャモニに行って来ました。ここもジュネーブから1時間のドライブ。近いっす。
フランス語圏の人々には「白山」そのものであり、「白山」と言えば「富士山」に匹敵する固有名詞であるわけです。では、他の一般的な「白い山」はなんと呼ぶのだろう、と不思議な気持ちになりますが、まあ、考えなくてもいいでしょう。
拙の知るモンブランと言えば、ナッツのクリームの上に栗の甘露煮が乗ったケーキですが、実物をどう眺めてもケーキには見えて来ません。ケーキのモンブランの命名はパリ説、自由が丘説とがあるようですが、地元にはモンブランという名前のついたパンがいくつかありました。シャモニの市場で飛ぶように売れていて、撮影は叶わず。フランスではこうした週末市場が盛況です。ここで刺身用の魚が入手可能です。でも、モンブラン寿司はなかった。和料理店「五月」があったのはその需要ゆえか。
さて、シャモニの街中を辿り始めると、こんな線路が。
アプト式登山鉄道であります。これだけ平らな面でもピニオンが敷かれているのはいささか疑問であります。箱根の登山鉄道に見られるピニオンと似ていますが、こちらの方がプリミティブに見えます。でも、これで充分なのでしょう。
ここから街中を行けども行けども、ツーリスト・インフォメーションが見えて来ません。道行く人々に聞いても、そういえば最近見ないなあ、とのこと。どこにあったのかを覚えている地元民も皆無。でも、看板や標識はあります。その時、結石のような腹痛が拙を襲います。拙は川沿いのベンチで休み、常備薬を。家族は街を巡ってみることに。
拙がうとうとしていると、妙な掛け声で目を覚まされました。どうせ子供の奇声だろうと目を伏せておりましたが、もう一声の奇声。目を上げてみると、目の前に4名のご老人。「こんなところでうたた寝をしたらあかんよ」という警告だったような気がします。でも、痛みが引くまでの10数分間ほとんどうたた寝しておりました。それにしてもあの発声、あたかも間の抜けたヨーデルの如し。でも、ここはフランス。
家族が戻ると、モンブランに面する山のふもとに向かい、シャモニー谷の反対側の山の上からモンブランを眺めようということになりました。ところが、ロープウェイ基地が大規模な改装中でした。ツーリスト・インフォメーションの事務所もその辺にあったらしいが、人気なし。
やむなく、モンブランのふもとにあるロープウェイ乗り場に向かい、モンブランに登ろうということになりました。で、ここでの問題が往復のロープウェイ料金。4人家族で111ユーロって、ほとんど2万円じゃん。高いけど、滅多に来ないだろうなあ、と登りました。
2317mの中腹Plan de l’Aiguilleでロープウェイを乗り換えます。そこでは万年雪に触れられます。粉雪で、握っても固まりません。あまりの冷たさに手が痛いと叫ぶ息子。陽が当たっていたので寒さは気になりませんでしたが、気温は0度前後かな。ここから、ハング・グライダーで下降する人々も居ます。ここから、モンブラン山頂まで歩いて行く人も居ます。
転げたら、確実に死。年間の犠牲者は10名以上。でも、そこに山があるのね。
我々はさらにモンブランに近づくロープウェイに乗り込みます。ロープウェイ基地に近づくにつれ、徐々に異変が起きています。50名あまりのすし詰めの車内ではかなりの人たちが気分悪そうな表情をしています。拙も頭痛がしてきました。到着直前に車内の真ん中で倒れる女性がいました。軽い脳震盪のようでしたが、これは明らかに急性の高山病。過呼吸と思しき人もちらほら。
ロープウェイを降りて、さらに高いテラスに進む途中、階段や通路のあちこちに吐寫物が見られます。階段を登るうちに拙も息切れします。「あれ、この程度の階段でこんな筈では」と思ったものの、これも高山病の症状。頭もふらふらします。さらに高いテラスに登るにはエレベータに乗り込みます。ロープウェイ基地の標高が3776m。エレベータの到着地Aiguille de Midiが3842m。そこからモンブランを臨みます。
吐き気と頭痛と朦朧とした気持ち悪さと折からの腹痛を抑えながらの絶景でした。でも、子供たちは誰もが元気にしています。若いって素晴らしい。写真を撮ったり、いろいろな景色を眺めては1時間ばかり過ごしましたが、けっこう辛かったです。目の前で突然吐き出す人もいたけど、皆さん、それでも楽しそうでした。
「うえー、げろげろ、いい景色だなあ」
笑顔のゲロゲロを見たのは初めてであります。
昨日紹介した近所の山登り先はこの景色の中にあります。ここも雲海の中。
ロープウェイで下山途中、ペットボトルで水を飲もうとしたら、ボトルが変形して潰れていました。頂上で飲んで、1/4ほどになっていましたが、中身が満タンだったらどうなるんでしょうね。地上で満タンだったものは、4000mの頂で蓋を空けた途端に噴出すんでしょうか?はて?
帰宅して気付いたのがこのボトル。頂上で飲んでから帰宅するまで一度も見ていませんでしたが、2段階で地上の空気圧を受けています。たぶん、標高2000mにしばらく居たので、そこで受けた気圧と地上の気圧との2回に分けて気圧変化を受けたゆえでありましょう。エヴィアンのペットボトルがひょうたん型になってしまいました。もちろん、蓋を空ければ同じ気圧になって元通りのカタチになりました。
気持ち悪くなるくらい、気持ちいい。最近、もっとも気持ちいい経験でした。あと何回シャモニに行くのかな。