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1月17日から18日という短い時間の話である。この間の出来事は拙の経験したスイスであり、医療であり、牧歌というけっこう勝手な人間だが、「ことの本質は何?」と考えることが好きな人々には楽しいのではないかと勝手ながらに思う次第。
1月17日の朝6時、兼ねての予約に間に合わせるべく、阪神大震災のことを思い出しながら味噌汁ご飯を掻き込む。カツヲ節と昆布の併せダシをスイスで食べられる日本人は幸せな筈だ、と言い聞かせているに過ぎない。これからの2日間のことを思うと既に過去のことになってしまった阪神大震災よりも気が重い。被災者にしても将来は過去以上に思いがあるし、重いものである。震災後は「頑張りましょう」と励ますボランティアの朗らかな自身があったが、自分のこととなると大した病気ではなくても気が重い。
なぜなら、言葉の通じる日本や英国ならまだしもここはスイスである。フランス語圏のジュネーブである。医療従事者がどれだけ英語を解するか、拙が個人的に統計を取っても30%に満たない。巷の買い物レベルであれば、70%は通じるかもしれないが、医療では英会話のレベルが下がる。言葉の判らない医療機関に世話なるなど、こんなに怖いことはない。
病院での治療後は運転できない可能性があるので、公共交通を利用。遅れないはずのスイスの電車が出発時刻を5分過ぎても現れない。なんだか英国に戻ったような気分。それでもアポの時間ギリギリに到着。血液、心電図などをチェックしてから、入院病棟に案内される。手術は午後で、午前中はテストということだから、待ち時間も覚悟していた。
昼近くまで掛かって諸検査が終わる。ここまでは日本と似ている。英国はもっと効率が悪いと考えながら、入院病棟の茶話室で次の指示を待つ。
2名の若い看護士(スイス人)が現れる。
「よくあることなんですが、手術は明日になりました」
「え、よくあること?何がよくあるんですか?今日の予定が明日になること?それとも、予定が変更になること?」
「え、…と。明日行われるとは思うんですが、朝になるか、午後2時ごろになるか…」
「君の意見を聞いても仕方ないんだが、私は緊急性をもって入院した患者だよね」
「そうですが…」
「僕よりも緊急を要する患者がさらに後から出てきたということでしょ。なら、僕はこのまま死にますから、どんどん緊急の患者を治療してくださいよ。その代わり、この病院の悪名は世界中に広まるようにしてあげますから」
看護士は二人とも泣きそうになる。