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10月に来て以来のスイス、春はまだ遠いと思っていたのにやはり来るべきものは来る。生きていれば、必ず未来は将来となりやがて現実となる。
このところの暴風雨は真冬ではない証拠かもしれぬ。本当のスイスの冬を知らぬままに過ごしてしまったのは温暖化ゆえか、忙しさゆえか。季節も時間も経つのが速い。それだけいろいろなことがあり過ぎたのかもしれない。
商業イヴェントというのも毎年予定され、スイス中の至るところで開催される。ジュネーブの春は世界のモーターショーから始まると言われる。
今年は3月6日から16日まで。拙もこの春祭りに参加して来た。日本なら晴海のモータショーに匹敵するか、それ以上の高級車が並ぶと言われる。たぶんもう一度脚を運ばなくてはならないので、本日は触りまで。
この日は各車の燃費とCO2排出量ばかりを見ていた。
それにしても資料がフランス語ばかりなのには参った。
来月はバーゼルだけど、プレスパスは届きそうもない。
このところ、毎週末は世界のどこからともなく友人が泊まりに来る。やはり、ジュネーブは来易いのか。
こちらもまだ観光を十分にしていないので、彼らに同行することは苦にならない。むしろ、複眼でいろいろなものを観るので、拙だけの価値観や感性以上に、面白い見方に気付かされる。
昨日はオールドタウンのM&Sのまん前で俳優モーガン・フリーマンに遭遇。二人のガードマンを従えて、あの颯爽とした風貌で街を闊歩していた。道行く人々の多くが振り返り、互いに目を見合わせてはうなずきあっていた。拙は彼の大ファンなのでサインを貰いに行こうとしたが、護衛の顔が怖かったので止めた。だって、拙よりも20cm以上でかいし、強面なんだもん。下手に近づいて防御の大義名分で手を出され、怪我しても文句も言えないだろうし、あの歩く速度はコンタクト拒否のポーズであり、サインは断られるに決まっている。
それにしても、モーガン・フリーマンが何故ジュネーブに居たのか。モーターショーを観に来たってことはあるまい。非公式ではあるが、人権会議に関わるやり取りが行われているので、そのプロパガンダとして重要な彼がジュネーブを歩いていてもおかしくはない。
人権と言えば、スイスでは養子縁組が多い。先日タイ国名誉総領事に会ったら、彼はスイス人だった。60歳の彼にはタイ人の子供が10名ほど居る。ハーグ養子縁組み協定のお陰で「スイスは手続きが簡単なんです」とのことだが、それだけにスイスでは養子熱が高い。且つその成り手と受け入れ側との関係が需給関係になりつつあり、それが社会問題化している。養子を斡旋する業者が産業化することで、養子となる子供たちが「商品化」しているということだ。
ハーグ協定の主旨は恵まれない子供たちを、子供を持たない人々が親になって救えるのではないか、ということがポイントだった筈だ。しかし、世の中は本来の趣旨から捻じ曲がってモノゴトが運営されることは避けられない。
昨日から泊まりに来た友人は英国人S。彼女には6つ年上の姉Pがいる。Pはタイ人で、Sが生まれる前にSの両親の養子になった。しかし、Pの希望で彼女は物心ついてからタイで高等教育を受けを寄宿生活をしていた。だから、SとPには面識がないけれども、法律上の姉妹関係があった。
そのPは3年前に突然英国のSの家に現れた。
「私、アナタの姉です。英国人と結婚してプーケットに住んでいましたが、津波で子供も夫も死んでしまいました。私にはもういく所がない」
Sには青天の霹靂で、40年間以上両親の口頭でしか知らされていない姉の存在はSの想像の枠を超えていた。SはどうやってPの立場を理解しようかと、途方に暮れたそうだ。
その後、Pは亡くなった夫の家族のサポートでタイレストランを開いて、英国で暮らしている。
Sの家族や旦那の家族が人権など当然のこととして考える人たちだったから良かったものの、同じ境遇で、誰からも見向きもされない人々は人権などを考えることもなく、ただ必死に食い扶持を探すことになるのだろう。
基本的人権が平等であるべきだと言っても、それは自由競争原理のなかでは矛盾する概念だしね。
世界機関の食堂(カンティーン)では10フラン(約1000円)ほどでメインミールが食べられる。
国際赤十字社本部のカンティーンは改装が開始されるまで、一般人の出入りは自由。国連は厳重なセキュリティチェックを受け、職員と一緒であれば、カンティーンに入れる。どちらも凄く美味いわけでもないのに、たまたま行った日のメニューと選択に恵まれた。
赤十字ではミックスミートとクスクスのディッシュ。国連では豚のスペアリブ。それぞれがとても美味だった。スペアリブのソースには赤味噌が混じっているように思えたが、そんな高価(外国ではCIF価格)なもの使うわけないね。最近、自宅では魚ばかり食べているから肉汁が美味く思えた。
在ジュネーブ世界機関の社員食堂めぐり。用がないと入れないから現段階では企画倒れ。国連は多機能、多事務所だからカンティーンも多い。今までに世界で一番良いと思ったカンティーンは市谷の防衛庁。今は防衛省だから、もっと良くなってんのかな。カツの衣が薄くなったとか。国会図書館はまあまあ。味付けが安定しないのはどうもね。30年前の京都大学も良かったが、当時の東大に勝てる学食はなかった。修学旅行の自由時間に立命、同志社、京大に行って、志望校の決め手になったのはやはり学食。だって、どの大学に入っても同じ勉強するけど、4年間おいしいものの安定供給がないとあきませんわ。でも、カンティーンの食事でどの機関に入るかを決めるヒトはいないだろうね。イギリスはどのカンティーンに行っても不味かったなあ。お陰でソーホーの中華通になってしまった。
今後の目標は、ITU WIPO WHO WTO…、どこにも一応知り合いはいるが、こんなことを書いていたら叱られそうだ。国連のYさんごめんなさい。でも、スペアリブよりもおいしいものをご馳走しますから、許して。
あ、そうだ。スイス国際学校の食堂めぐりってのも出来るかな。
懲りない奴?
ジュネーブの政財界の人たちだけを集ったディナーショーに招かれた。
何故拙が招かれたのかはよく判らない。たぶん参加者の中で一番貧乏人だったと思う。
ディナーショーだから、と7時に腹を空かせてケンピンスキーホテルのシアターに行ってみると、アペリティフも何も用意されていない。しかも、公演終了予定は10時半。いきなり萎える。
近くのケバブ通りまで行って、ケバブを頬張るか。でも、食べた後に漂う臭いで周囲の人に迷惑を掛けたくない、と我慢。バーに行く時間もないので、ホテルマンに水をねだる。
演技が始まると、空腹を忘れるほどの迫力と美しさだった。
http://divineperformingarts.org/sy/multimedia
でも、見慣れてくると彼らの足の裏の汚ればかりが気になる。席がかぶりつきだったから、化粧の具合まで良く見える。もうちょと下がった席の方が全体が観られていいんではないかい?
1時間後のインターミッションでジュースとスナックが振舞われ、少し生き返った気分。その後、さらに1時間の演技。
実はこの劇団の背景をまったく知らないで観ていた。しかも、幕間ごとに言葉を入れる司会者たちはフランス語と中国語なのでなんだかよく判らなかった。それでも、中国の思想とは離れたものがあることを感じた。例えば、共産党は神を否定しているのに、彼らは自らを神韻と呼ぶ。それって真っ向からの共産党批判じゃない?すると、彼らの活動意義は?拠点はどこ?
内容は中国雑技団ほどではないけど、バレエにアクロバット要素を盛り込んだモダンな動き。背景に安っぽいCGも使っている。
演後の宴では出演者たちとも懇親。このときに拠点がNYであることを知る。皆英語を話す。主に華僑で、国籍は様々。インド人もいたし、混血は多い。
女性リーダー的な存在の蘇仙姿の正面画像。サインも貰う。まだ18歳だって。拙娘と変わらない年齢。喜び組を思い出したが、口を謹む。
おお、懐かしの中国選手団?
専属記者からのインタビューを受けた。聞き方に宗教色がこもっている気がした。彼らの強調する「真善忍」の話に誘導しようという意図が感じられる。こうやって、世界中の人の意見を自分たちの活動を支える根拠にしたいんだろう。
このときの時刻は夜の11時半。児童保護法に抵触しないのだろうか。可愛いから許す。
神韻芸術団の公演は日本でも行われたらしい。この日行われた公演はかなり排他的で、特別な料金だったようだ。1000席のうち300席しか埋めてなかったのは意図したものとのこと。彼らの巡業は世界主要都市で行われるとのこと。
フランスの山Plateau du Retordで、ナイトハイキングをやった。
スイス人ガイドが雪山を先導する。雪道に野生動物の足跡を見つけては環境問題について、夜空の美しさと天文について、そして雪道の美しさ、下界のイルミネーションを堪能させてもらう・・・予定だった。
しかし、雪は殆どなく、曇天の闇夜、下界も少々霞んでいる。日中雨が降った黒い地面を踏みしめる暗夜行進。
「う~ん、このハイキング何が面白いのかなあ」
「まあ、雨天決行だから、それと比べればいいでしょ」
「雨天で誰がこんな危険な山道を歩きたいの?しかも、ガイド料まで払って」
でも、結局同行した人々が良くて、ずっと喋りっ放し。
途中の雪道で足を取られて少々難業でしたが、楽しい2時間の山道歩行でやんした。
この日の最高高度は1250mなのか1150mなのかは2名のスオォッチ保持者それぞれが異なるデータを示したので不問。100mの誤差は大き過ぎる。
出発地に戻る頃に下界のイルミネーションが映え、行程の辛さを忘れさせる。
ロッジに戻って、フォンデュで一杯。
実は拙の初フォンデュ。
最初の一口で美味い。とろけそうだ。とろけているのはチーズだ。
ふた口目のフォンデュも美味い。
三口目のフォンデュも悪くない。
いくつ食べたろうか、ちょっと飽きてきたところで小休止。
フォンデュ、なかなか減りませぬ。
「休むとお腹の中で膨らみますよ」とは、同伴頂いたT女史のお言葉。
飽きたので、膨らんだ方がいいかな、と思う。
同じ味が続くので、あまり長く食べ続けられない。
この経験、他の食事でもしたことあるなあ。
お好み焼き、たこ焼きがこの類。
すぐに飽きちゃう。
拙は持参したタラコと鮭のおにぎりを傍らでかぶり付く。んまい。
この集いも楽しかった。13歳の女優マデレン何某とはマンガについて語り合う。好きな日本アニメは宮崎アニメで、日本語を話せるようになりたいそうだ。彼女はけっこうメジャーなフランス映画に出ている。
フォンデュを経験してわかったことは、チーズは再利用が可能であること。フォンデュに漬けるパンは古くてもいいこと。野菜不足になること。単調な料理だけど止められないこと。次回からマイタバスコを持参しようと思うこと。七味もいいかもしれない。
いや、それよりももうフォンデュはいいかな。やはりジャパニーズフォンデュ、寄せ鍋が最高。